義民が駆ける (中公文庫)
によって 藤沢 周平
3.6 5つ星のうち(12人の読者)
電子ブック義民が駆ける (中公文庫)無料ダウンロード - 内容(「BOOK」データベースより) 時の老中水野忠邦の指嗾による三方国替え。越後長岡転封の幕命に抗し、羽州荘内領民は「百姓たりといえども二君に仕えず」の幟を掲げて大挙して江戸にのぼり幕閣に強訴、ついに将軍裁可を覆し、善政藩主を守り抜く。天保期荘内を震撼させた義民一揆の始終。
義民が駆ける (中公文庫)の詳細
本のタイトル : 義民が駆ける (中公文庫)
作者 : 藤沢 周平
ISBN-10 : 4122023378
発売日 : 1995/6/18
カテゴリ : 本
ファイル名 : 義民が駆ける-中公文庫.pdf
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本作の主人公は、「義民」たるべき庄内藩の百姓達ということになろうが、実はもう一人の「義民」がいた。その名は、矢部左近将監定謙(さだのり)。3か月前に、問題の「三方国替え」を策した老中首座水野忠邦が江戸町奉行に「登用」した人物である。尤も「以前に、忠邦と意見が衝突して役(勘定奉行)を解かれ」たこともあったが、忠邦には『町奉行にしたのは、儂じゃ。まさか、楯つきもしまい』との「権力の座にいる者の、肥大した自負」があった。しかし矢部は、例え「立場は苦しくな」っても、忠邦に「見くび」られるのを潔しとせずに、「江戸町奉行として、天下が注目している事件を一気に裁いてみせたい功名心」もあって、「国替え一件をそもそものいきさつから」「公けに」する「取り調べ」で臨み、結果老中首座を追い込み、「三方国替え」は「停止」となったのである。この経緯が描かれるのは、全体の2割足らずの分量であるが、権力内部での決着の付け方として、様々な示唆を持つとともに、物語をどんでん返しする箇所として、読み応えを感じさせた。しかし本作の中心は、表題からして残りの8割ということになろう。言うまでもなく、庄内百姓達の信念に充ちた画策から粘り強く用意周到な決起(強訴)に至る経緯とその結末である。これに決起(強訴)の標的となる忠邦ら幕閣と、決起(強訴)に力を得た庄内藩主及び藩政中枢との複雑な思惑、駆け引きが、水戸藩や周辺諸藩を巻き込んで展開する様も加わり、本作全体を成す。結局は、どう読み込むかということになるが、一様では済まない。敢えて指摘すれば、決起(強訴)は、百姓達が自ら考え、判断し、行動してのことであるが、それらを成さしめた要因に関し、記述が薄いことである。作中の百姓達は実に沈着冷静で、しかも高度な戦略性と計算された戦術性を兼ね備え、のみならず処罰覚悟の決死の訴えを、時を見計らって見事に進退させており、その様は、感動を越える。また彼らの強い精神性や指導者の優れた統制力は、眼を見張るものがある。小説の域にないことかも知れないが、本作では、何故それらが可能となったか、の分析が、百姓達の「昨日のように今日があり、今日が何ごともなく明日につながる」という保守性としか描かれていない。史実であるにも関わらず、迫真性に欠ける印象を拭い切れない所以か、と思料する。とともに小説の醍醐味を削いだ嫌いも否めなくしている。
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